栄養を取る方法には、口から食べる、チューブで消化管に入れる、静脈から入れる、この3つの方法があります。
今回はその中でチューブで消化管に直接栄養を入れる、経管栄養と経腸栄養について、そのメリットとデメリットをまとめます。
経管栄養と経腸栄養のメリットデメリット
経管経腸栄養とは、医療や介護の現場でよく見かける、鼻やお腹からチュープを入れ、胃や腸に流動食や栄養剤を流しこむ方法です。
経管経腸栄養にはこのような種類があります。
- 経鼻経管栄養
- 胃ろう(胃に穴をあける)
- 腸ろう(腸に穴をあける)
経管栄養と経腸栄養にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
メリット
食べ物の誤嚥や窒息の心配がない
チューブから胃や腸に直接栄養物を入れるので、食べものをのどに詰まらせたり、誤って気管や肺に入ってしまう誤嚥のリスクが低いのがメリットです 。
ただし、 唾液を誤嚥することは防げません。
確実な栄養管理ができる
本人の食欲や食べる能力に関係なく、目的に応じて必要な栄養を必要なぶんだけ補給できるので、 栄養不足になるのを防ぐことができます。
デメリット
五感が刺激されない
チューブで入れるのはドロドロの流動食や栄養剤などです。噛む・飲みこむというプロセスもないので、五感が刺激されません。
見た目も美味しそうには見えないし、実際に美味しくもありません。
栄養の吸収が悪い
栄養物は口を介さずいきなり胃や腸に入ってきます。唾液の分泌や脳の活性化は起こらず、 内臓の準備もできていないため、同じ量の栄養をとっても、経口より吸収は悪くなります。
見た目が悪い、行動が制限される
からだにチューブが入った状態なので、見た目は決してよくありません。 行動範囲やできることも制限されがちです。 また、 チューブからの感染を防ぐため、 消毒が必要です。
経管栄養と経腸栄養は、必要な栄養を確実にとれるというメリットはありますが、噛む飲みこむというプロセスなしに、消化管に直接栄養物を流しこむため、五感の刺激や脳の活性化は起こらず、経口に比べ栄養の吸収が悪くなるというデメリットもあります。
それぞれの種類についてもう少し詳しく説明します。
経管・経腸栄養の種類
経鼻経管栄養
鼻からチューブ(カテーテル)を差しこみ、のど・食道を通して胃(または十二指腸、空腸)まで入れ、栄養物を直接注入する方法です。
入れる栄養物には、通常の食品をミキサーにかけた流動食、 人工的に手を加え消化しやすい形態にした半消化態栄養剤、必要な栄養素だけを化学的に合成した成分栄養剤などがあります。
鼻腔からの栄養は、手術が必要ないため、短期間で嚥下障害が治りそうな患者に向いています。ですが、装着時には不快感や苦痛を伴うことがあります。
チューブ挿入の際、患者にとって最も苦痛なのは、食道の上部を通過するとき嘔吐反射が起こることです。
「オエッ!」ってなります。
胃ろう
お腹の皮膚に穴をあけ、胃までチューブを通して (胃瘻造設)、栄養物を直接胃に注入する方法です。胃ろうは内視鏡を用いた簡単な手術(経皮内視鏡的胃瘻造設術:PEG)で作ることが多いです。
経鼻経管栄養よりも患者の負担が少なく、また、見た目にも分かりにくいということがメリットです。
胃瘻や経鼻胃経管栄養法と異なる第三の経管栄養法として間歇的口腔食道経管栄養法(OE法)が注目されています。慣れれば10秒ほどでチューブを挿入でき、患者の苦痛はほとんどないという。今後の普及が予想されます。(出典:日経メディカル)
腸ろう
お腹の皮膚に穴をあけ、 小腸(空腸)までチューブを通して(腸瘻造設)、栄養物を直接腸に注入する方法です。
肺炎などで胃に胃ろうが出来ない人が使う方法です。栄養剤を腸に直接注入することから、下痢を起こしやすくなります。
まとめ
今回は、チューブで消化管に直接栄養を入れる、経管栄養と経腸栄養について、そのメリットとデメリットをまとめました。
口から食べることが困難・不可能な場合や、口からだけでは十分な栄養がとれない場合、手術前後などにこの経管経腸栄養が用いられます。
要介護高齢者の増加に伴い、食べる機能が低下している人々が多く存在するようになりました。栄養療法の普及や医療安全という背景から非経口栄養のみで管理される人々が数多くいます。
口から食べることををやめて、胃ろうや腸ろうにしても、唾液を誤嚥する危険性はなくなりません。むしろ誤嚥性肺炎のリスクは高くなるとも言われています。
そして、口から食べることをやめることで、生きがいを無くす人が多くいます。
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【参考文献】
『介護のための口腔ケア』:菊谷 武
日本静脈経腸栄養学会雑誌 3(5 0 )Oral intake Rehabilitation:Tamami Koyama
胃瘻でも経鼻でもない第三の経管栄養法(2016/05/12):日経メディカル
『誤嚥性肺炎は食べながら治す』:塩田 芳享