「逆流性食道炎は放置しても大丈夫?」
このような疑問を持っている人に伝えたいことは、「絶対に放置しないでください。」ということです。逆流性食道炎を放置した結果、食道がんや誤嚥性肺炎のリスクを高めてしまうことにもなりかねません。
逆流性食道炎とは、胃液や十二指腸液が食道まで逆流してしまうことにより、食道が炎症を起こすことをいいます。
主な症状は、胸やけと胸の痛み、また、苦みや酸っぱみを感じたり、そのようなげっぷがでます。特に夜間の痛みが特徴的です。
そこで、逆流性食道炎を放置すると起こりうるリスク、逆流性食道炎からがんへの進行するその過程と、胃の内容物が逆流して起こる誤嚥性肺炎についてまとめます。
逆流性食道炎からがんへの進行過程
バレット食道から食道腺がんになる確率は、欧米では最近の25年間で6倍に増えているとされています。
しかし、日本における逆流性食道炎からバレット食道、食道腺がんになる確率は1000人のうち2人ほどで、さほど多くはありません。
出典:日本消化器病学会「患者さんと家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイドブック」より
バレット食道とは?
逆流性食道炎と関連が深い「バレット食道」という病気。通常、食道は「扁平上皮」、胃や腸は「円柱上皮」という粘膜に覆われています。
ところが、逆流性食道炎で食道が傷害されると、 食道粘膜は胃と同じ粘膜に置き換えられるのです。このように変性した粘膜は「バレット粘膜」、バレット粘膜が存在する食道は「バレット食道」 と呼ばれています。
「バレット粘膜」と「バレット食道」は食道腺がんの温床になります。
バレット食道から食道腺がんに進行
食道の粘膜が胃の粘膜と同じものに変性する「バレット食道」の多くは症状がなく、内視鏡検査でたまたま発見されるのが一般的です。
問題になるのは、粘膜が変質した範囲が3m以上になると、将来的にがん化の恐れがあることです。
食道がんには、食道本来の粘膜が侵きれる「食道扁平上皮がん」と逆流性食道炎とそれに伴って変質したバレット食道から発症する「食道腺がん」があります。
日本では食道がんの90%以上は食道扁平上皮がんですが、欧米では食道腺がんが半数以上を占めます。日本でも逆流性食道炎の増加に伴い、今後は食道腺がんの増加が予測されています。
出典:逆流性食道炎を自力で防ぐ(池袋大谷クリニック院長:大谷義夫)
次は、胃の内容物が逆流して起こる誤嚥性肺炎についてまとめます。特に高齢者の誤嚥性肺炎はがんよりも怖い病気と言われています。
もっとも危険な合併症高齢者の誤嚥性肺炎
高齢者の生死にかかわる「誤嚥性肺炎」(ごえんせいはいえん)。その原因に、逆流性食道炎などが関係していると数多く報告されています。
通常、口から入った食べ物は、咽頭から食道を通って胃まで届きます。しかし、飲みこむ力が弱くなった高齢者では、食べ物が誤って気管に入ってしまう「誤嚥」を起こりやすくなります。
食べ物が気管に入り、その細菌が肺に入りこんで炎症を起こしてしまうと誤嚥性肺炎を生じます。
誤嚥性肺炎の発症原因は、大きく2つに分けられます。
食べ物や細菌を含む唾液の誤嚥
胃液の逆流による胃の内容物の誤嚥
特に、誤嚥性肺炎の多くは食事中よりも睡眠中に細菌の混ざった唾液の誤嚥や、夜間の胃内容物のこみ上げによって起こるとされています。
免疫機能やのどの筋力が低下している高齢者は、さらに誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高くなります。
▼リスク回避方法
睡眠時、唾液の誤嚥からの炎症を防ぐ一番のリスク回避方法は、就寝前の丁寧な口腔ケアです。
胃の内容物のこみ上げを防ぐ方法は、食後にすぐに横にならないようにすることです。食後90分は横にならないようにしてください。
出典:逆流性食道炎を自力で防ぐ(池袋大谷クリニック院長:大谷義夫)
まとめ
逆流性食道炎を放置すると、食道がんや誤嚥性肺炎のリスクを高めてしまいます。必ず医療機関を受診してください。
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