慢性腎臓病の治療において欠かせないのが、食事療法です。
なぜかというと、患者さんがふだん食べている食事によっては腎臓に大きな負担をかけ、腎機能がますます低下してしまう恐れがあるからです。
そこで、腎臓病の食事療法のための基礎知識をまとめました。ステージごとにどのような食事制限があるのか、また、食べてはいけないものは何か知りたい人におすすめの記事です。
腎臓病の人が注意しなくてはいけない食品
腎臓病の人はこれらの食品に注意が必要です。
- たんぱく質
- 塩分
- カリウム
- リン
- 水分
- アルコール
ではどのように注意をすべきなのか、見ていきましょう。
たんぱく質
たんぱく質は代謝されると腎臓からしか排泄されない尿素窒素などの老廃物が出ます。そのため、腎臓に負担をかけるため、摂取量に気を付けなければいけません。
腎臓病の方の目安となるステージごとの1日のたんぱく質摂取量の計算式があるので一度確認してみましょう。
塩分
腎臓病の人は、血液中の余分な塩分(ナトリウム)を排泄する腎臓の能力が落ちています。
そのため、血液中のナトリウムの量を増やしすぎないためにも、塩分量の制限が必要になります。(腎臓病の種類や症状、病期などによって内容は多少ちがいます。)
慢性腎臓病の患者さんに推奨される食塩摂取量は、病期ステージにかかわらず、1日6g未満が基本です。
塩分を減らすには、まず薄味の調味を心がけること。そして、どんな食品にどれだけの塩分が含まれているのかを知り、1日の塩分摂取量を減らしていくことです。
カリウム
カリウムは腎臓からしか排泄されません。
腎臓病が進んで腎機能が低下すると、体の中にたまったカリウムが多くなりすぎてしまうことがあります。そのため、血液中のカリウム濃度が高くなってきたら、食事での摂取を制限する必要があります。
カリウムの制限が必要なのは、慢性腎臓病(CKD)の重症度でステージG3bからです。
ステージ(GFR) | カリウム(mg/日) |
ステージG1(GFR60~89) | 制限なし |
ステージG2(GFR45~59) | 制限なし |
ステージG3a(GFR45~59) | 制限なし |
ステージG3b(GFR30~44) | ≦2,000 |
ステージG4(GFR15~29) | ≦1,500 |
ステージG5(GFR<15) | ≦1,500 |
※性別、年齢、身体活動などにより異なります。
「カリウムの多い食品=たんぱく質の多い食品」です。
リン
リンは体内のカルシウムと結合して、骨や歯を丈夫にします。
腎機能が衰えると、血中にリンがたまりやすくなります。リンが多くなると、体はバランスを保つために骨からカルシウムを取り出します。そのため、骨がもろく弱くなりやすくなります。
血液中のリンの濃度が高くなってきた場合、やはりこれらの食品の摂取を制限します。リンを制限するのは基本的には透析療法を導入してからです。
食品からリンだけを制限することはほぼ不可能です。ですが、たんぱく質を制限することでリンを制限することが出来ます。
「リンの多い食品=たんぱく質の多い食品」です。
保存期間の長いお菓子や加工食品、冷凍食品には保存料はpH調整剤としてリン酸塩が含まれていることがあるので、注意が必要です。
水分
腎機能が少し低下した段階では、尿を濃縮する能力が低下するため、老廃物を排泄するために水分摂取を多めにします。
ところが、腎機能の低下がさらに進んで、尿をつくる能力が減ってしまうと、水分を排泄できなくなるので、逆に水分摂取を控えなくてはなりません。
水分過多やになると、むくみや呼吸困難、血圧上昇、そして心不全や肺水腫などの深刻な症状にもつながります。
アルコール
アルコールは、適量ならば摂取に問題はありません。
ですが、アルコール摂取に問題はなくても、つまみで塩分やたんぱく質を摂ることは問題になります。
また、透析治療を受けていたり、飲水に制限がある場合は注意が必要です。このときは、アルコールも水分量として扱わなければなりません。
食べてはいけないもの・注意が必要な食べ物
これまで述べてきたように、腎臓病では注意しなければいけない食品が多くあります。
カリウムやリンはたんぱく質を制限することで、同時に制限されます。
低たんぱく食品=低カリウム食品=低リン食品
そこで、腎臓病の人が特に気を付けるべき食品、注意が必要な食品はたんぱく質と食塩です。
まとめ
腎臓病の食事療法のための基礎知識をまとめました。
腎臓病の人が特に気を付けるべき食品、注意が必要な食品はたんぱく質と食塩です。
また、ステージごとに様々な食事制限があります。注意しなくてはいけない食品を知ることが、食事療法の一番大事なポイントです。