現在、慢性腎臓病が疑われる人は、約10人に1人と言われています。
私の働く施設にも、ここ数年で慢性腎臓病の方が増えて来ました。透析をしている人もいますが、ほとんどの人がステージG3の初期です。(みなさんとっても元気です。)
腎臓病は自覚症状が少なく、気づかないうちに病気が進行してしまいます。気付いた時には透析一歩手前という人も少なくありません。
慢性腎臓病においては、ステージが進むほど食事制限が厳しくなり、食べてはいけないものが増えてしまいます。腎機能を維持していく為には、軽症のうちに食事療法を徹底する事がとても重要です。
そこでステージごとに制限がある、慢性腎臓病の食事療法の基本をまとめました。
ステージG1、G2
腎臓病がそれほど進行していないステージ1、2では、塩分を1日6g未満に抑えることと、肥満にならないよう、自分の適正な摂取エネルギー量を計算し、カロリーオーバーしないようにします。これはメタボリックシンドロームを予防するための健康食と共通しています。この段階であれば、家族と同じ食事をすることが出来ます。
ステージ1、2の食事療法は、高血圧や肥満、耐糖能異常や糖尿病の予防・改善も目的にしています。
ステージG3
ステージ3以降になると、塩分の制限と摂取エネルギー量の調整に加えて、タンパク質の制限が必要になります。
ここからは家族と同じ食事をすることが難しくなります。低タンパク食品などの治療用特殊食品も利用して、タンパク摂取量を調整すると、食べる楽しみを減らさずに食事療法を続けることができます。
このステージ3で徹底した食事制限を行えば、腎機能を維持することができますが、ステージ4以降になると、長期的な腎機能の維持は難しくなります。このステージ3が腎機能を維持する最終防衛ライン。
ステージG4、5
ステージ4、5ではむくみが強ければ、水分の摂取量も控えるようにします。
また、カリウムの尿への排出ができにくく、高カリウム血症が起こりやすくなります。そのため、カリウムの制限が必要になります。カリウムの多い野菜や果物の摂取を制限したり、ゆでるなどの調理の工夫で含有量を減らしたりします。
加えてリンの排出も悪くなるため、高リン血症にも注意します。そのため、リンの制限をする必要があります。
参考資料:患者のための最新医学 腎臓病 改訂版
まとめ
最後にもう一度、腎臓病のステージごとの食事療法をまとめます。
ステージ1、2では塩分とエネルギー量の調整をします。
ステージ3以降では、塩分の制限と摂取エネルギー量の調整に加えて、タンパク質、カリウムの制限が必要です。
ステージ4、5ではカリウム、リン、水分の制限が必要な人もいます。
ステージが進むほど食事制限が厳しくなるのが分かったかと思います。家族と同じ食事をするのもステージが進むごとに難しくなってきます。
さらに、制限が厳しくなるほどに、腎臓病治療用特殊食品(低たんぱく食品など)を用いたり、手間をかけて食事を準備したりしなければならなくなり、負担が大きくなります。
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