高齢者の食欲不振で低栄養が続くと、どんどん体が細くなってきて心配になりますよね。
私の働く施設に、最近ほとんど食事を出来なくなった方がいました。
延命の治療をするかどうか家族とも話をしなければいけない頃だと思っていたのですが、なんと…あるものだけで元気と体重を取り戻しました。
今回はこの話をしますね。
食欲不振が続き、やせ細る
誤嚥性肺炎で入院したSさんが退院してきました。
入院中も食事があまり摂取出来なかったようで、もともと細いのですが、さらに痩せて帰ってきました。
Sさんは入院前までは自分で歩いていたのですが、退院してからは車椅子になってしまいました。そして、ほとんどの時間をベッドで過ごしていました。
食欲もなく、水分はむせるのが怖くてなかなか飲んでくれません。施設に戻ってからもどんどん痩せていくのが分かります。会話もほとんどなくなり、ベッドでぼーっとしながら毎日を過ごしています。
家族にも最後の時をどう過ごすか話し合いの場を設けようとしていました。
そんな時の、とある日の朝食のメニューにバナナが付いていました。
朝食はほとんど口を開けてくれなくて食べることが出来なかったのですが、なんとバナナを口元に持っていくと、パクっと1口食べました。
嚥下力はそこそこ残っているので、もぐもぐしてゴクっと飲み込むのを確認すると、もう一度バナナを口に近づけてみました。すると、またパクっと食べました。
そしてそのままバナナ半分を食べてしまいました。
おかゆ2~3口、高カロリーゼリーを数口だけ食べる日が続いていたので、バナナ半分も食べたのにはびっくりしました。
ただ水分はなかなか取れませんでした。
そして、お昼ご飯の時間。
おかゆを1口食べて後はいらないと言って寝てしまったようです。
バナナが食べたい
そして夜ご飯の時間。私が食事介助の番です。いつも通り、おかゆを2~3口食べて、何も食べたくないと言うSさん。
私は朝のバナナがまだ残っているのを思い出して、「バナナありますよ。食べますか?」
と聞くと、「バナナなら食べたい」というSさん。
そしてまたバナナ半分を食べて寝てしまいました。
早速、この事をご家族さんに電話で伝えました。
次の日、近くに住む娘さんがバナナとバナナジュースを沢山届けてくれました。
だんだんと食欲が戻った♪
Sさんは入れ歯のかみ合わせが悪いこともあり、飲み込み力はあるものの、かなりのソフト食です。娘さんが持って来てくれたバナナは少し硬く、噛みにくそうにしていました。
そこで、バナナをスプーンで軽くつぶし、さらに持って来てくれた高カロリーバナナジュースと混ぜて食べさせてみました。
なんと、Sさんはこっちの方が食べやすくていいと喜んで食べてくれました。
バナナジュースを合わせることで、水分もかなり摂取でき一石二鳥です。
相変わらずおかゆやおかずはほとんど食べてはくれませんでしたが、このバナナ×バナナジュースは飽きずに毎日しっかりと食べました。
最初は栄養の偏りも心配していましたが、食べないよりはましですし、何より点滴よりはいいとの事で、ご家族さんもそのようにしてくださいとの事。
みるみる元気になってきたSさん。
ベッドから出て他の入居者の方と過ごすことも増えて来ました。
次第に、果物のゼリーやバナナ以外の果物も食べるようになってきました。
おかゆはあまり食べませんが、みそ汁やスープ類は少しずつ食べる量が増えて来ました。
そしてだんだんと体重も戻ってきました。
最後に
今回は、重度の食欲不振になってしまったSさんが、バナナで回復したという話でした。
正直、ここまで回復するなんて誰も思っていなかったと思います。恐るべし!バナナの力。
Sさんの場合、たまたまバナナがラッキーアイテムだったのでしょうね。そして、Sさんにとってはまだ逝き時ではなかったのでしょう。