歯のない人は認知症リスクが約1.9倍といわれています。
なぜ、歯がなくなると認知症のリスクが高くなってしまうのか、歯と認知症の関係を、書籍『認知症が気になりだしたら歯科にもいこうはなぜ?』より、まとめます。
歯がなくなると認知症になるメカニズム
なぜ歯の数が減ると「認知症を発症しやすくなる」のでしょうか?そのメカニズムを説明します。
まず、歯を失い噛めない状態になると、生野菜などの硬い物を食べなくなります。そうすると、栄養学的に認知症予防になると言われているビタミンCやビタミンEなどの摂取が不足することが考えられます。
また、歯がほとんどない状態では軟らかい物ばかりを食べ、噛む回数が減ります。噛むこと(咀嚼)によって、菌の根の周りや咀嚼筋の神経から脳の記憶をつかさどる細胞に刺激が伝わるのですが、噛む回数が減ることで記憶力などの機能の低下が起こることが考えられます。まとめ
さらに、歯を失う過程で歯周病となり、歯の周りに慢性的な炎症を抱えることで、血液を介して活性酸素やサイトカインと言われる物質が全身の様々な臓器に影響を及ぼし、脳にも悪影響を与えると考えられています。
(神奈川歯科大学大学院歯学研究科 口腔科学講座教授 山本龍生)
- 硬いものを食べなくなり、栄養が不足する。
- 噛む回数が減ることで、脳が刺激されず、機能が低下する。
- 歯周病となり慢性炎症を起こすと、血液から全身、脳に悪い物質が流れる。
これが歯がなくなると認知症になると言われている理由です。では、どうすれば歯をなくさずにすむでしょうか?次にまとめます。
減り続ける歯を残す方法
歯は親知らずを除き全部で28本!年齢とともに、とくに奥歯から失っていきます。
国の調査によると、70歳を境に歯の数が20本を下回り、その後減り続けます。
歯を失う原因は「虫歯」と「歯周病」です。
虫歯の原因と虫歯から歯を守る方法
虫歯は、細菌が砂糖を食べて、酸を出すことに原因があります。酸が歯を溶かして穴が開くのが虫歯です。
予防法
歯磨き(口腔ケア)
歯周病の原因と歯周病から歯を守る方法
歯周病は、歯と歯の間の歯垢が原因です。
予防法
- 歯と歯の間や歯周ポケットのブラッシング
- 定期的に歯科医院で菌石を取ってもらう
※喫煙者は歯周病のリスクが2~8倍高くなります。また、糖尿病の人もリスクが高まります。
禁煙や糖尿病の治療も歯周病リスクを減らすこととなります。
歯を減らさずに残す方法は、日頃の口腔ケアと定期的な歯科受診が重要です。
健康な場合でも、一般の人がご自身だけで歯の手入れを完全に行うことはとっても難しいものです。
ぜひともこれからは、かかりつけの歯科医院をお持ちになり、専門家の視点やアドバイスのもとで、予防できるリスクは極力下げていくことをお勧めします。
私たちの歯は、20本の歯があればたいていの物を噛んで食べることができるとされ、認知症発症リスクも低いと言われています。
ここで気になるのが、すでにほとんど歯のない人や、総入れ歯の人の認知症のリスクですよね。介護施設にいると、だいたいの人が総入れ歯や部分入れ歯です。
その人たちは認知症になるリスクが高いのでしょうか?次で説明します。
すでに歯のない人や、総入れ歯の人の認知症のリスクは?
愛知県知多半島で4年間行われた歯の数と認知症発症の関係についての調査データによると…
歯がほとんどなくても、義歯をしっかりと使っている人の認知症発症リスクは、自分の歯が20本以上ある人とほとんど差がありませんでした。(神奈川歯科大学大学院歯学研究科)
この研究結果により分かったことは、歯がほとんどなくても、義歯を使うことで、認知症発症のリスクを低くすることが出来る可能性があるということです。
そのほかの認知症発症リスクのデータ
●歯がなく、義歯も使っていない人の認知症の発症リスクは歯が20本以上ある人に比べて1.85倍高い。
●かかり付けの歯科医がいない人は、いる人に比べて、リスクが1.44倍と高リスク。
歯と認知症の関係についての研究は大規模な物から小規模なものまで多数あります。今回はこちらの研究のデータを参考にさせていただきました。
出典:『認知症が気になりだしたら歯科にもいこうはなぜ?』愛知県知多半島で4年間行われた歯の数と認知症発症の関係(神奈川歯科大学大学院歯学研究科)
まとめ
歯のない人は認知症リスクが約1.9倍!ということで、歯がなくなると認知症になるメカニズムをまとめました。
様々な研究から、口腔機能の低下は認知症の発症や進行にも大きく関わっていることが分かっています。
最後まで20本をキープすることが健康寿命を引き延ばし、認知症や要介護の予防になります。それには、かかりつけの歯科医院に定期的に歯を見てもらうことが重要です。
すでに義歯の人は、めんどくさいからと歯をつけずに柔らかいものばかりを食べず、ちゃんと義歯を装着してしっかりと噛んで食べましょう。