がんなどで胃の切除をすると、食べ物を一時的にためておいたり、たんぱく質や脂肪の一部を分解したりする胃の機能が失われるため、さまざまな後遺症が現れます。
これを胃切除後症候群といいます。
胃のどの部分を切除したか、どのぐらいの範囲を切除したのかで症状が変わります。中でも、幽門部を切除する幽門側胃切除術をした場合、食べ物をためておく機能が失われます。
そのため、小腸に食べ物が一度に流れ込み、全身症状が起こります。これを「ダンピング症候群」といいます。
ダンピング症候群って、こんな症状です
胃を切除した人に起こる後遺症の事を「ダンピング症候群」といいます。食べ物が一度に小腸に流れ込むために起こる全身症状です。
「ダンピング」とは、ダンプカーが土砂や荷物などを一気に投げおろすことを表す言葉。土砂や荷物を食べ物におきかえると、食べたものが食道を通り、胃の機能を失った残胃や十二指腸に大量に流れることによって起こるさまざまな不快な症状を指します。
ダンピング症候群の症状:種類は2種類
食事のあとすぐに起こる「早期ダンピング症候群」と2~3時間後に起こる「晩期ダンピング症候群」があります。
早期ダンピング症候群
食後5~0分ぐらいで起こる早期ダンピング症候群。早期ダンピング症候群は冷や汗、動悸などの症状が起こります。
原因
糖質を多く含む甘い食べ物(浸透圧の高い食べ物)を食べると、急激に胃から腸に急激に排出され、腸の動きが激しくなります。それにより、さまざまな不快な全身症状を引き起こします。
症状
全身症状...冷や汗、動怪、めまい、しびれ、だるさ
腹部症状…腹痛や下痢、吐き気、嘔吐、腹部膨満感
早期ダンピング症候群が起こるしくみ
浸透圧の高い食べ物が急激に腸に運ばれる
↓
腸の動き(蠕動)が激しくなる
↓
腸から血管に作用する物質が分泌され、全身の血管が広がる
↓
冷や汗やめまいなどの症状が出現する
予防と対処法
早期ダンピング症状になったら、無理をせず、しばらく横になって休むことが大切です。食事は低糖質にして、たんぱく質や資質を中心にゆっくりとよくかんで食べること。腹八分目にすることを心がけましょう。
晩期ダンピング症候群
食後2~3時間で現れる晩期ダンピング症候群。頭痛やめまいのほか脈や呼吸が速くなるなどの症状も現れるのが特徴です。
原因
ごはんやパン、麺などの炭水化物が胃から小腸に急速に流れ込み、一時的に高血糖を起こしたあと、インスリンが分泌されることで低血糖になります。
症状
晩期ダンピング症候群は、頭痛や倦怠感、発汗、めまいなどが主な症状で、脈や呼吸が早くなるなどの症状も現れます。低血糖の症状です。
晩期ダンピング症候群が起こるしくみ
炭水化物が小腸に急速に流れ込む
炭水化物に含まれる糖質が、急激に血液の中に吸収されて、一時的に高血糖になる
糖を処理するインスリンというホルモンが、糖の吸収が終わっても分泌され、そのため低血糖になる
予防と対処法
この晩期ダンピング症候群は、低血糖状態により引き起こされているので、飴やチョコレートなどの糖分を補給することが大切です。
ダンピング症候群の症状が起こりそうと感じたら、すぐに飴をなめることが予防に効果的です。常備しておくといいでしょう。
まとめ
ダンピング症候群についてまとめました。もう一度簡単にまとめます。
ダンピング症候群とは胃の切除後に起こる後遺症
ダンピング症候群には2種類あり、それぞれに対処法が異なる
- 早期ダンピング症候群…横になって休む
- 晩期ダンピング症候群…飴などで糖分補給